前回、「善悪」や「正しさ」を判断基準として行動をすると、自分の「軸」がぼやけ、他者の「軸」に振り回される可能性があると述べました。
ならば、何を以って自分の行動規範とすればいいのでしょうか。
前回記事
自分が何に「価値」を感じるか。
「善悪」や「正しさ」に代わる行動基準は何か。
「価値」に基づいて行動してみるというのはどうでしょうか。
自分が「価値」を感じるかどうかで、行動を決めるのです。
何に「価値」を感じるか。
これは、自分の「軸」を形成する大きな要素のひとつです。
前回記事の転職を例に取ってみましょう。
「収入は十分だが、自分にとって今の仕事が合わないから転職したい。」ということであれば、この人にとっての「価値」は恐らく、「高収入」つまり「金銭的に豊かになること」ではないのでしょう。
「充実した仕事がしたい。」という「生き甲斐」なのかもしれません。
それとも、「収入は十分だが、激務すぎる。」ということで、「穏やかな生活」に「価値」を感じているのかもしれません。
もし、今の仕事を続けながらでも、その「価値」に基づいて行動できる方法があるのなら、妻の言うとおり、今は転職は控えておくというのもひとつの選択肢かもしれません。
例えば、自分が「充実した仕事ができる」と感じられる担当部署がその会社にあるのであれば、そこへの異動を希望してみる。
工夫することで、残業を減らすなど、激務を改善できるという見込みがあるのなら、そのように試みてみる。
しかし、そのような見込みがないのであれば、あなたの「価値」に基づいた行動を執ってもいいのではないでしょうか。
つまり、自分が望む条件に見合った職場への転職を試みるのです。
もちろんそのことで、妻から反対を受けるかもしれません。
場合によっては、夫婦の修羅場を迎えるかもしれません。
失敗したときに、その結果を受け止める覚悟も必要でしょう。※
これらは非常に勇気のいることかもしれません。
それらを負うかどうかもまた、あなたの選択です。
※僕たちは失敗というものを必要以上に重く受け止め、まるで敗北のように感じることがあるかと思いますが、実際は失敗とは、僕たちに改善点を教えてくれる経験なのです。
「価値」に「正解」はない。
「善悪」や「正しさ」で判断する習慣が染みついている僕たちにとって、「価値」にも「正解」があるのではないかと考えるかもしれません。
しかし、「価値」とは「考える」ものではなく、「感じる」ものです。
だから、「価値」には「正解」はありません。
言い換えるなら、あなたが「価値」を感じるものが、あなたにとっての「正解」なのです。
それが出世だろうと、お金儲けだろうと、のんびりマイペースに暮らすことだろうと、一人で趣味に没頭することだろうと、あなたが心の底から「こうありたい。」と感じられることなら何でもいいのです。
そこには原則的に「こうあるべきもの」はありません。※
※法を犯すことや、徒に他を傷つけることがNGであることは、言うまでもありません。
どのようにして「価値」を見つけるか。
しかし、僕たちの多くは、他人の「軸」で生きることに慣れています。
だから、自分が本当に「価値」を感じるものは何か、分からなくなっている人も多いでしょう。
これには、基本的に深い「内省」が必要ではないかと僕は思っています。
そのための有効な手段のひとつが、マインドフルネスの実践です。
「自分はこんな人間である。」という安易に決め付けられた自己イメージのさらに奥深くにある、真に自分が「価値」を感じるもの。
これに気づくためには、評価を下さずに自分の心の内を観察することも、有効かもしれません。
人によっては、そう簡単には気づかないかもしれません。
しかし、忍耐強く実践することで、あなたは自分の「軸」の構成要素である「価値」を自覚することでしょう。
心理療法「ACT」について
今回の記事で紹介した、「価値」に基づく行動の推奨は、「ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)」という心理療法のメソッドです。
「ACT」の目的は、「価値」に基づいて行動し、充実した人生を創造することです。
僕はこのメソッドを多いに取り入れています。
「価値」についてご興味を持たれた方や、さらに深く知りたい方は、ぜひ「ACT」について学ばれることをお勧めします。
この記事内では深く触れていないのですが、「価値」とは行動指針であって、目標ではありません。
「ACT」において、そこは重要なポイントなので、本気で取り組もうと思われた方は、ぜひ確認しておいていただきたいと思います。
以下、「ACT」の解説書兼ワークブックをご紹介します。
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この書籍は、以前もこのブログで紹介していますが、そのぐらいお勧めです。
僕にとっては非常に分かりやすい内容・文体でした。
また何より、心理読み物にありがちな綺麗ごとやポジティブ思考礼賛から一線を画しながらも、どこか前向きな雰囲気の文章に好感が持てました。
ご興味ある方は、ご一読いただければと思います。