ポジティブ思考がうまくいかない理由【マインドフルネスによるアプローチ①】
※注意※
この記事は、ポジティブ思考やそれを実践している方々を貶めることが目的ではありません。
ポジティブ思考がうまくいかずに自分を責めてしまう人に対して、「あなたのせいではない」ということを知っていただくとともに、別の方法を提案させていただくものです。
それをご承知のうえ、閲覧いただけると幸いです。
もし、あなたが人間関係で悩んできたなら、ご自身の思考パターンを矯正しようと試みたことがあるのではないでしょうか。
もしくは現在もその取り組みを継続されているかもしれません。
そのとき、まず自分のネガティブな思考パターンに原因があると考えて、それを正そうとするのは至極当然のことであると僕は思います。
そこで、僕たちは思考そのものをコントロールしようとするのではないでしょうか。
結論から申し上げますと、マインドフルネスでは違ったアプローチをします。
思考パターンの変容という点では、行き着くところは同じです。
しかし、思考そのものをコントロールしようとはしません。
むしろ、思考の内容にはなるべく注目せず、「思考が来た」ということに気づいて、距離を取るようにします。
それは精神のメカニズムから見ても、理に適ったことであると僕は考えます。
なぜなら、思考のコントロールは遅かれ早かれ失敗してしまうものであると言っても過言ではないからです。
今回はその理由をご説明したいと思います。
「思考はコントロールできる」という神話
「思考はコントロールできる」
あなたはこの神話を信じているでしょうか。
ポジティブ思考も、この神話に基づくものなのかもしれません。
ポジティブ思考と一口に言っても、もしかすると色々な方法があるのかもしれません。
また、情報によってニュアンスも異なってくるのかもしれません。
ですから、もしあなたが現在取り組んでいるポジティブ思考を、あなたが信じるに値するものと感じているのなら、これ以上この記事を読まれる必要はないと思います。
しかし、もしネガティブな思考をポジティブな思考に置き換える試みがうまくいかないのなら、この神話を疑ってみてもいいのかもしれません。
思考のコントロールは失敗して当然
①思考の抑圧は逆効果
おそらくあなたももう経験されたのではないでしょうか。
「ネガティブに考えてはいけない」
このように思考を働かせると、ますますネガティブな考えが起こるということを。
次のことを試してみましょう。
では、今から3分間、猫について考えてはいけません。
・・・どうでしょうか。
あなたはかえって猫について考えてしまったのではないでしょうか。
「〇〇について考えてはいけない」
実はこれが、「〇〇について」の考えを増幅させるのです。
そして、それは精神のごく自然な働きでもあるのです。
心理学的にもほぼ明らかになりつつある見解のようです。
ですから思考の抑圧は、有効であるどころか逆効果であるといえるかもしれません。
②思考の関連付けによる弊害
また、思考というものは、直接関係ないもの同士を結び付ける働きも持っています。
たとえば、親しい友人が、雪の降る寒い夜に事故で亡くなったとします。
「彼は事故で亡くなった」
「それは寒い冬の夜のことだった」
すると、思考がこれらを関連付け、雪が降る寒い夜が来ると、亡くなった彼のことを思い出すようになる。
連想ゲームは、まさにこの働きを利用した遊びです。
この働きが、ポジティブ思考をますますこじらせていると僕は考えます。
「ネガティブに考えてはいけない」
「ポジティブに考えよう」
もうあなたもお察しかもしれません。
この考えによって、ネガティブとポジティブが関連付けられます。
また、前述のとおり、「ネガティブに考えてはいけない」によって、ネガティブな考えは増幅されます。
すると、ポジティブに考えようとすることで、かえってネガティブな考えが頭に浮かぶようになるのです。
つまり、思考をコントロールしようとする試みは、心理学的に見ても失敗して当然なのです。
(参考文献 「ACTをはじめる セルフヘルプのためのワークブック」 星和書店 著:スティーブン・C・ヘイズ 他 訳:武藤 崇 他)
ここまで、思考のコントロールが逆効果であるという理由を見ていただきました。
では、それに代わるマインドフルネスのアプローチとはどういったものなのでしょうか。
以下、次回でご説明します。
(続く)