内面観察【マインドフルネスによるアプローチ②】
前回記事で、メンタルヘルスにおいて、思考そのものをコントロールしようとする試みがうまくいかない理由をご説明しました。
今回は、思考のコントロールに代わる方法として、マインドフルネスではどのようにアプローチをするのか、お伝えしたいと思います。
内面を観察する
マインドフルネスにおいて、僕たちは自分の内面を忍耐強く観察します。
その真意は、自分の心の中にある思考や感情の存在を認めることにあるのです。
もちろん、観察する対象のなかには、あなたがあると都合が悪いと思っている思考・感情も含まれます。
「こう思ってはいけない」
「こう感じてはいけない」
あなたがこれまでの生い立ちで身につけた、思考・感じ方のタブーを少しずつ解きほぐしていくのです。
観察することで、それらの思考・感じ方は実はそのままにしておいても大丈夫なのだということを体感していきます。
こうして恐怖は少しずつやわらぎ、自分の心のタブーは減っていくのです。
それは、自分の心の中にある都合の悪い思考や感じ方を排除しようとするやり方と、ある意味逆のアプローチだといえるでしょう。
「自分で評価を下さない」姿勢
マインドフルネスでは、あるものは「ある」と認めますし、ないものは「ない」と認めます。
だから恐怖を感じているのなら、「恐怖がある」と認めます。
何も感じていないなら、「感じない」と認めます。
言葉にすると簡単なようですが、実はこれは非常に難しいことです。
なぜなら僕たちは、個人差はあれ、自分の思考・感じ方を機械的に評価する癖がついているからです。
「こんな風に感じるなんて、いけないことだ」
「悲しむべき場面で悲しめない私は、薄情な人間だ」
そして、感じていることを感じていないと強がったり、感じていないことでも感じているフリをするのです。
そこでマインドフルネスでは、「自分で評価を下さない」という姿勢をトレーニングします。
これは、「評価をしてはいけない」ということではありません。
なぜなら、それはコントロールできないからです。
マインドフルネスを実践するうちにあなたも気づくと思うのですが、様々なものごとに対して僕たちの思考が行う評価は、僕たちの意志を超えて勝手に起こっているのです。
評価を下している自分を評価するなら、きっとあなたは自分を裁き続けることになるでしょう。
だから、自分が下す評価に気づくだけでいいのです。
日常生活こそ実践の場
これは、自分の内面を観察するうえで、極めて効果的であると僕は考えます。
何か出来事が起こったとき、僕たちは出来事そのものを観ているのではなく、そのときに想起してきた思考や感情を通して観ています。
つまり、僕たちがものごとに対して下す評価というのは、実は自分の内面でそのとき起こった思考や感情に対する反応なのです。
「自分で評価を下さない」とは、自分の思考や感情に対処しないということ。
自分の思考や感情を、ただ観るということ。
この姿勢は、内面観察そのものだと言っても過言ではないでしょう。
内面観察は日常生活で行うことで、その真価を発揮するものと思います。
この訓練を日々重ねるとき。
あなたは自分の思考・感情や自分の身に起こる出来事を、まるで他人事であるかのように受け流す技術を少しずつ習得していくことでしょう。
このとき、あなたの思考や感情はもはや、あなたに襲いかかる脅威ではないのです。