美しい花が咲いている。
ただ咲いている。
そこには何の気負いも感じられない。
「私が美しさで皆を喜ばせるのだ」などと強調している気配もない。
「私が咲き誇ることで、地球の皆を笑顔にするのだ」などと主張しているふうでもない。
ただ咲いている。
そしてただ美しい。
私には花の真意はわからない。
だけどたぶん、この花は誰かのために咲いているわけではない。
きっとそこには意図もない。
意識的な努力もない。
本当に、ただ咲いている。
そこにミツバチがやってくる。
花の蜜を吸って飛び去る。
そのとき花は、たぶん何も求めていない。
「この美しい私のために受粉させなさい」などと要求している様子は見られない。
ことさらにミツバチをもてなし、見返りを得ようというはからいも見られない。
ただ咲いている。
そしてその美しさと蜜の味に魅せられたミツバチが、受粉の手伝いをしている。
その恩恵により、花は次代へ命をつなぐ。
おそらくそこにも意図はない。
ただ花が咲いた結果、そうなったというだけ。
ただミツバチが魅せられた結果、そうなったというだけ。
これはひとつの自然の流れ。
そこには強引さがない。
ぎこちなさもない。
生きるということに対して、余計な味付けがなされていない。
だからこそ美しい。
花はただ咲いている。
きっとそこには意図はない。
意識的な努力もない。
それゆえに、周囲は花に魅せられる。
そして、花は自らに見合ったものを受け取る。
その循環は、完璧な調和とともに流転する。
だからこそ美しい。